“70歳の手習い”で通う多可町のピアノ教室の発表会に2年ぶりに出演。
初めて出た前回は、幼稚園児や小中高生がすいすい演奏する中で指がコチコチになってミスの連続。赤っ恥を掻いて、来てくれた孫達にも面目丸潰れだった。
半年間、けいこを休むほど落ち込んだが、今回また思い直してリベンジに挑戦。それでも不安ばかり先立っていたが、奮い立たせてくれたのは12月、大阪城ホールでの「1万人の第九」合唱の際に聴いた、18歳のヴァイオリニスト、服部母音(もね)さんの演奏。
国際コンクールで賞を総なめしているとは言え、随分難しい曲を1万人の前で演じこなすのに驚いたが、司会者に「勿論緊張します。克服するのは、納得いくまで練習したという思いだけ」と話した。
もう1つ。草笛光子さんが日経1月連載の「私の履歴書」で、日本のミュージカル草分け期、「ラ・マンチャの男」に出た際、「主役を3人で務めるトリプルキャストだったため練習がはかどらず、思い詰めて自殺しそうになった」と書いていたこと。「こんな大女優でも」と、安心をもらった気がした。
正月以来、毎朝6時に起きて演奏曲を繰り返し弾き、「あとは開き直るだけ」と本番に臨んだところ、不思議に“胸ドキ”は治まり、数カ所躓いたものの、何とか恥だけは掻かずにすんだ。(E)