中井権次顕彰会のツアーで神崎郡市川町の岩戸神社を訪ねた。高さ20㍍の2つの岩が両側にそびえる奥に本殿があり、大勢の村の人達の出迎えを受けた。
周りはうっそうとした大杉。ひときわ大きい神木は台風で倒れ伐採されたが、切り株の上が丁寧に屋根で覆われている。江戸時代に参詣に来た姫路城主の松平大和守がこの環境を絶賛したという。
柏原から出向いた5代中井丈五郎正忠らの銘の入った本殿の彫刻は竜、鳳凰、十二支の動物達など見ごたえのあるものばかり。拝殿に掲げられた源平合戦など数々の絵馬も由緒を感じさせる。
長老の柳瀬龍吉さんの説明の中で、「虫送り」が今も続けられているという話が興味深かった。平家の斎藤実盛の馬が稲株につまずいて敵に討ち取られたため、ウンカに化して稲を食い散らすようになった言い伝えを基に、怨霊を慰め害虫を退治する夏の行事。実盛と馬の人形を先頭に神社から出発し、「ゴージャラコ、サネモリ様にお伴せえ」とはやしながら村内を練り歩いた後、人形を燃やす。
境内の周囲には山野草園が整備され、クリンソウやクマガイソウなど50種類の草花を育てている。淡々と話す柳瀬さんの口ぶりから、大昔から山里の生活や文化の中心となって来た神社への村人達の愛着と誇りがじんと伝わってきた。(E)