大国のリーダー

2019.02.07
丹波春秋

 内外のジャーナリストが所属する日本記者クラブで昨年初め、年末時点を予想するクイズが出された中に、「米国大統領はトランプか?」というのがあったとか。正解率は聞いていないが、トランプ政権の先行きを危ぶむ人が少なくないのだろう。

 ニクソン元大統領の「ウォーターゲート事件」をスクープしたワシントンポスト紙のボブ・ウッドワードの近著「恐怖の男トランプ政権の真実」は、大統領と閣僚や補佐官など側近、また側近同士のやりとりを、その場にいた多数の人から聞いた話をもとに書かれている。

 そこからは、他人の言に耳を貸さず、自分の思いつきを頑固に押し通すトランプ流に、取り巻き達が手を焼いている様子が浮かび上がる。良識派と見られていたティラーソン国務長官、マティス国防長官らが相次いで辞職させられた。

 トランプ氏が最も重んじるのは、自分に投票してくれた人達への“信義”。「アメリカファースト」、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)からの離脱など驚くような政策も、ひとえにそこから始まる。

 自分の選挙のみ考えるリーダーと、権力の掌握と維持発展のみに執着するもう一方の大国のリーダー。この両国に命運が委ねられているところに、現在の世界の危うさがある。 (E)

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