消毒液製造「異常事態」 3カ月で年間受注超え メーカー対応苦慮も「必要な人に届いて」

2020.03.13
ニュース丹波篠山市地域

消毒液の製造に追われる従業員ら(画像の一部を加工しています)=2020年2月28日午後1時46分、兵庫県丹波篠山市味間奥で

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、消毒液の需要が急増し、ドラッグストアなどでもほとんど商品を見かけなくなるなど、全国各地で品薄状態が続いている。消毒液を製造している医療機器・育児用品・化粧品メーカーの「ジェクス株式会社」(本社・大阪市)では、年間製造量をはるかに超える量をすでに受注。兵庫県丹波篠山市味間奥の製造工場はフル稼働状態で、従業員を2交替制にするなどして対応しているが、液を入れる容器メーカーの生産が追いついておらず、「異常事態。少なくとも発送までには3カ月待ちの状態」と話す。

同社は自社製品のアルコール消毒液のほか、大手医薬品メーカーの消毒液も生産。自社製品を作る余裕がほとんどないほど、メーカーからの発注がかかっている。

300ミリリットル入りのメーカー商品は、昨年で年間80万本を製造。今年は新型コロナウイルスの拡大が広がった1月からの2カ月で40万本を超えたほか、すでに4月からの3カ月で100万本を受注している。

消毒液の製造は例年、インフルエンザ予防などのため、冬季がメーンと言い、春先からの増産は異例という。

通常勤務に加え、午後から夜遅くまでの勤務を作り、2交替制でフル稼働しているが、「まったく間に合っていない」(同工場)のが現状。別工場からの応援も受けている。

同社は、「とにかく忙しいが、品質は維持するよう細心の注意を払っている」と言い、「マスクのメーカーなども必死で対応されており、『商機に対応している』とも言えるけれど、早くコロナが収束してほしいと願う面の方が強い」と複雑な気持ちを吐露する。

一方、同社で作った製品がインターネットなどで転売されており、通常1200円程度の商品が5000円や、中には2万円の値が付けられているものもみかけたと言い、「本当に必要とされている人に届いていないのが残念」と話している。

同社の梶川裕次郎社長は、「災害や感染症の拡大は喜ばしいことではない。また、今、増産で大幅に雇用を増やしたとしても、その後も雇い続けられるかは分からず、会社としてはとても難しいところ」と言い、「それでも、弊社としては、メーカーとしてできることで社会に貢献していきたい」とした。

消毒液を市に寄贈「地元で使用は誇り」

また、同社はこのほど、丹波篠山市にアルコール消毒液を寄付した。自社製造している商品で、業務用の5リットル入り10個とボトル50個。同社によると、約20万円相当という。

3月1日に同市内で開催予定だった「丹波篠山ABCマラソン」の感染症予防にと市から依頼を受けて寄付の準備を進めていた。新型コロナウイルスによる肺炎拡大を受けてマラソンは中止となったが、アルコール消毒液の入手が困難になっている状況を踏まえ、市が協力を要請し、予定通り寄付することになった。

市総務課によると、市役所や支所などの公共施設、市のイベント時などに使用する。

消毒液の品薄は深刻で、寄付した製品もたまたま在庫があったもの。篠山工場の川上忠克工場長は、「自分たちが作ったものが地元の市で使ってもらえるのはうれしい。誇りです」と話していた。

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