「異形の仁王」修復 顔面ハチに巣くわれるも 取り戻した威厳で「にらみ」

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ハチに巣くわれた吽形像(写真左)と、修復を終え、元の姿を取り戻した吽形像=兵庫県丹波市山南町谷川で

顔面をハチに巣くわれ、守護神として頼もしい威厳のある表情が失われてしまっていた兵庫県丹波市山南町谷川の常勝寺の仁王像にある修復作業がこのほど完了した。頭部を取り外して、奈良県の文化財修復家のもとで修復を受けて無事に寺に戻され、再び仁王門で以前と変わらぬ迫力あるにらみを利かせている。

吽形像頭部内部から出てきたハチの巣をしげしげと見つめる前住職の実順さん

2020年8月下旬、口を結んだ「吽(うん)形」像の中空となっている頭の内部にキイロスズメバチが巣作りを始めた。経年劣化で眼球の位置が両眼ともずれたことでできたすき間からハチが出入り。あれよあれよという間に、内部から巣があふれ出し、顔面を覆い始めた。無数のハチが飛び交い危険であったため、参拝者に注意を促し、ハチがいなくなる冬を待つことにした。その間、巣は勢いよく増築され、特に目玉部分を中心に大きく膨らんで、目玉が飛び出したように見える不気味な異形の姿となった。

この出来事を取材した丹波新聞の記事を同寺の宮崎実康住職(56)がフェイスブックにアップしたところ、新潟県の仏像修復家、松岡誠一さんから修復に関するアドバイスのメッセージが届いた。

 

ハチがいなくなった昨年1月、宮崎住職が手作業で顔表面の巣を取り除いた。「あとは内部。さてどうしたものか」と松岡さんにアドバイスを求めたところ、奈良県に住む知人で同業の田川新一朗さんを紹介してもらい、田川さんに修復を依頼した。

吽形像頭部内側に書かれた墨書き(写真提供:箭上文化財修復)

昨年5月、田川さんが寺を訪れ、仁王像の頭部を取り外し、工房に持ち帰って修復作業に取り掛かった。

頭部内部からは、高さ約30センチ、直径約20センチの7層からなる巣が出てきた。また、クリーニングの際、墨書きが見つかり、吽形像にちなんだ「ウーン」の梵字や、不確定で今後の調査が待たれるが、「元禄八年」(1695年)とも読める文字などを複数確認したという。

宮崎住職は、「今回の一件は災難ではあったが、仁王さんの存在の大きさに改めて気付かされ、修復家とご縁を結ぶこともできた。仁王制作の歴史につながるかもしれない発見もあるなど、決して悪いことばかりではなかった」とほほ笑んでいる。

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