当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は丹波市市島町鴨庄地区の夏の風物詩「案山子まつり」で、一風変わった1体を作り続けている荻野晃さん(68)です。
「案山子まつり」はコロナ禍により、3年ぶりに“復活”する。荻野さんは、手作りの水車を水路に設置し、その動力でかかしを動かすなど、随所に仕掛けを盛り込んでいる。「動くと、より興味を持ってもらえそうだから」と笑う。
草刈り機を持たせた農夫風のかかしが、草刈りをするように左右に動いたり、別の年にはセンサーを取り付け、人が通ると目が光って害獣ににらみを利かせたりする仕掛けで、来場者を楽しませている。
同地区には昭和初期、「丹波の農聖」と語り継がれる吉見伝左衛門が築造に尽力したため池「神池」がある。「この地域は神池の恩恵を受け、作物が実る。それに感謝したいと、水路を利用したかかしを作る」
どんなものを作ろうかと農閑期に考え、数カ月かけて作り込む。水路の幅や流量、くみ上げる力などから水車の羽根の枚数を決めており、「こんなことを考える時間が楽しくてね」と目を細める。
今夏も出品予定だが、構想は「お楽しみ」と笑顔。「地域では、サルやイノシシの被害が出る。獣害に効果があるのを作りたいね」