どんなに日照りが続いても「絶対に枯れない」と言われる、丹波市春日町小山自治会の井戸。今では利用する人はほとんどいないが、かつては飲み水などとして地域を潤した。
山本正一さん(98)、娘婿の山川茂則さん(71)宅と、道路の間に挟まれたスペースにある。手押しポンプに呼び水を打ち、ハンドルを上下させると、透明度の高い水が流れ出る。
今は道路とほぼフラットの位置にポンプがあるが、かつては今より約3メートル下がった位置にぽっかりと口を開け、直接、水をくめたという。15年ほど前の道路拡張工事で、井戸の上をかすめるように道が通ることになったため、井戸はふたをされたものの、水はポンプで供給できる。
水道の普及が十分でなかった昔を振り返り、山本さんは「井戸の前には小さな扉があって、渇水期は鍵がかかっていた。いくら枯れないとはいっても、一度にたくさんくむと水が減るからね」とほほ笑む。「うちが鍵を預かっていて、時間がきたら開けるという仕組みだった。朝早くに井戸の周りにバケツだけがたくさん並んでいたことを思い出す」と笑った。
「災害が起きて水道が使えなくなっても、この井戸水があるというだけで心の安心になっている」と話している。