当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は丹波篠山市中地区で17年間続く農産直売所「なかの里」です。
中地区の住民有志約20人が開いている。毎週水・土曜日午前7―11時半まで、同地区の農家が丹精した新鮮な野菜や、漬物などの加工品が並ぶ。運営するスタッフは「憩いの場」と口をそろえる。
自分たちが育てた食材を持ち寄って食事会を催していた地域グループが、「自家野菜が食べ切れず、残ってもったいない」という少人数家庭の悩みを解決しようと、2005年に開設した。
旬の食材を求め、市内はもちろん、はるばる京阪神から足を運ぶ客も多い。早朝から行列ができる日もある。
スタッフの平均年齢は75歳。何も販売しない日でもスタッフが集まってバーベキューをしたり、世間話に花を咲かせたりすることもあるという。90歳を超えるスタッフもおり、なかの里が「生きがい」になっているという。
開設当初から運営に関わるスタッフの矢野泰子さん(77)は「もうけは種代ぐらいになれば、という気持ち。それぐらいの気楽さでやっているから長く続けられているのかも」と笑う。
「落ち込んでいても、ここに来れば『何しとってん』としゃべってくれて、待ってくれている人がいる。みんなとの会話が何より楽しみ。ここがあるから元気になれる」と笑顔を見せた。