懐妊逸話数知れず 山里の子授け法要 今年は72組中12組「願済」

2023.02.16
地域歴史

願いを読み上げながら、法要に臨む飯田住職。参詣者はお堂の外から手を合わせた=兵庫県丹波篠山市大熊で

兵庫県丹波篠山市大熊にある「瑠璃寺・薬師堂」で11日、本尊の薬師如来に子授けなどを祈願する法要が営まれた。近年、口コミなどで御利益があると広がり、今年も県内外から多くの人が参拝。開始前は小雨だったが、読経と共に日が差し始め、訪れた人たちは不思議な懐妊話が数多く伝わる山里の小さなお堂に向かって、静かに祈りをささげた。

わずか10数軒の集落に、昨年よりも20組多い72組が参詣。懐妊や安産祈願のほか、願いがかなった報告「願済」にと、地元や県内他地域をはじめ、遠くは東京や福島、佐賀、神奈川などからも申し込みがあった。

法要には「もっそ」と呼ばれる供物が用意される。木桶の中に、乳房を模したドーム状の蒸し米や、女性器を象徴するわらで編んだ輪が配され、その輪の中には男性器の象徴として徳利(とっくり)が置かれる。

法要に登場するもっそ

本尊ともっそを前に、近くにある小林寺の飯田天祥住職が般若心経や薬師経などを読経し、薬師如来の真言「オンコロコロセンダリマトウギソワカ」を唱えたほか、申し込んだ人たちの名前と願いを読み上げていった。

瑠璃寺は平安時代に建立されたと伝わり、いつの頃からか子授けに御利益があるとして知る人ぞ知る祈願場所になっている。

科学的根拠は一切ないが、地元住民によると、「何年も子どもができなかった夫婦が祈願後、すぐにできた」「職場の同僚の依頼で住民が祈願したところ、子を授かった」―など、不思議な逸話が数多い。今回参詣した72組のうち、願済は12組だった。

住民から教わったポイントは、「法要後はどこにも寄らず、まっすぐ家に帰る」こと。その理由は、「立ち寄った先に子ができてしまう」からだそう。ある住民は、「毎年、願済や安産祈願を聞くのが楽しみ。少子化に貢献しとります」と笑う。

職場の同僚から法要を聞き、2年前に懐妊を祈願した市内の夫婦は、昨年、第1子を授かり、今年はお礼の願済に加え、「もう1人授かりたい」と懐妊を祈願した。夫婦は、「妊娠にはいろいろな要素があると思うけれど、『信じる』という気持ちが大切だと思う。来年はまた願済に来られたら」と赤ちゃんを愛しそうに見つめていた。

飯田住職は、「願いがかなったという話をされる方もあり、地域の方と一緒に続けてきてよかったと思う。皆さんの願いがかない、穏やかに生活されることを祈っている」とほほ笑み、西羅雅徳自治会長は、「願済と聞くとうれしいし、やりがいがある。みんなで協力して法要を行うことが、村人の交流にもつながっている」と笑顔で話していた。

法要は毎年2月11日午前10時から。

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