「夢は口に出して」 高校野球の名将・長澤宏行さんが講演 大谷選手例に「カメで良い」

2023.07.19
地域注目

味間小5、6年生に、夢に向かって努力することの大切さを伝える長澤さん=兵庫県丹波篠山市味間新で

兵庫県丹波篠山市スポーツ振興官で、県立篠山産業高校野球部監督の長澤宏行さん(70)がこのほど、同市立味間小学校で5、6年生(計189人)に講演した。演題は「スポーツで『夢』を描き『未来』を拓け」。長澤さんは、2010―22年の創志学園高校(岡山県)野球部監督時代に、春夏で6回、甲子園出場を果たした名将。メジャーリーグで「二刀流」として活躍中の大谷翔平選手の学生時代などを引き合いに、児童らに夢に向かって努力することの大切さなどを伝えた。味間小学校の創立150周年記念事業、あじま修徳塾の一環として、同記念事業実行委員会と味間地区まちづくり協議会が主催した。要旨は次の通り。

父親は西紀町西谷(丹波篠山市)の生まれ。盆になると、父に連れられて西紀へ墓参りに来ていた。父は小学1年生の時に亡くなった。父が私に残してくれた歌があった。童謡「うさぎとかめ」。「もしもしカメよカメさんよ―」と、病室で歌って聞かせてくれて、「―どうしてそんなにのろいのか」と歌ったところで亡くなった。小さい頃、「お父さんはなぜこの歌を残してくれたのか」と考えていた。つい最近まで「ウサギみたいに、たとえ相手が弱くても油断をするな」という教訓だと思っていた。

しかし、それは違っていた。ウサギはカメしか見ていない。言い換えるとライバルしか見ていない。一方のカメはゴールを見ていた。大事なことは、こつこつとゴールという目標に向かって自分のペースで努力することだ。ライバルを見て慌てることもないし、騒ぐこともない。

メジャーで大活躍している大谷翔平はウサギではなくカメ。こつこつタイプだ。高校の時の翔平を知っている。創志学園監督時代に対戦もした。

大谷は花巻東高校(岩手県)時代、高校の先輩で同じくメジャーで活躍中の菊池雄星をいつも目標にして頑張っていた。菊池が10本走るところを大谷は20本。常に菊池より目標設定を上に置いていた。そして人の話をよく聞いた。

大谷はさまざまなプロ野球解説者から、「二刀流をやっていたらつぶれる」と言われ続けてきた。大勢から「駄目になる」と言われていることに大谷は挑戦している。ここが大事。

夢は口に出すこと。夢を口に出したとき、周りの人は「そんなん無理や」と笑うかもしれない。「今まで前例がない」「常識がない」と言われたとき、やり通す勇気を持つことが大切だ。

監督をした神村学園高校(鹿児島)野球部が、創部2年目で、春の選抜で準優勝した。合言葉は「や・か・ぜ」。「やればできる」「必ずできる」「絶対できる」だ。これをみんなで唱え続けた。心がマイナスだと、全てが「できない」となる。

人はそこらの草花と同じで咲く時期がある。今は駄目でも何年かたてば咲く。花を咲かせるために必要なことは、努力を重ねることだ。

念ずれば花開く。家につぼみの付いた2つの花があるとしよう。片方には声をかけず、もう片方には毎朝、毎晩、「おはよう」「お休み」と声をかける。そうすると、いつも声をかけた花が元気になる。監督をしていた時期、毎日、六甲山を歩き、同じ木に向かって「私は絶対、甲子園に出て、プロ野球選手を輩出する指導者になる」とかなえたい夢を語りかけていた。周囲の登山客からはいぶかしがられたが、実現した。

今、夢を持っていない子がいても、それは構わない。夢はゆっくり探せばいい。でも自分の口で必ず「こうなります」と言える人になって。カメで良い。夢へのベクトルをしっかりと定めて。そして、仲間、友だち、家族、周りの人を大事にしてほしい。

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