黒枝豆のさや数 平年の88% 近年の高温少雨影響か? 不作の年並みの可能性も

2023.10.01
地域注目観光

ある農家の9月25日時点の黒枝豆のほ場。さや付きが悪い=兵庫県丹波篠山市内で

10月が始まった。兵庫県丹波篠山市にとっては、例年、多くの人が訪れる「丹波黒枝豆」のシーズンに入る。しかし、今年は高温少雨の影響か、農家からは「出来が良くない」という声が聞こえる。丹波農業改良普及センターなどの調査によると、さやの数が少なく、「不作」と言われた年並みの出来になる可能性があるという。ただ、「昨年よりは劣るけれど、まあまあの出来」という農家もあり、地域差がかなり出ているとみられる。

市内6カ所で定点調査をしている同センターによると、9月14日時点の1株当たりの平均さや数は78・1。過去10年間の平均より約10さや少なく、平年比88%で不作と言われた1989、90年並みの出来だという。

ただ、多い地域で102さや、少ない地域で55さやと地域間格差がかなり見られる。同センターは、梅雨明けから8月中旬の台風7号まで降雨がなく、8月上旬に株下から咲く「一番花」が落ちてしまったのではないかとみている。また、ほ場の保水力の差で生育に違いが出たのではないかという。

最も影響していると考えられるのは高温。市内の8月の平均最高気温、最低気温は共に2018年以降、高い状態で推移している。最高気温は17年が34・2度だったのに対し、18年以降はほとんどが36度台。今年は特に暑い日が多く、平均最低気温23・5度と過去13年間で最も高かった。

1株当たりのさや数、さやの総重量も18年以降低い水準が続いている。17年が96・0さや、848・4グラムだったのに対し、18年は78・5さや、471・1グラムに減少。昨年は100さやに復調したが、重さは577・0グラムにとどまった。

「今年は全然駄目。いつもが100なら20か30くらい。自分たちの口には入らないかも」とぼやくのは市東部の農家。異常な暑さと、欲しい時に雨が降らなかったためか、ほ場の豆はさやが少ないものが目立つ。

「木自体は大きく育ったし、花もたくさん咲いていたので『大丈夫かな』と思っていたら、一気に枝が伸び、花が落ちてしまった」

市南部の農家も、「今年は天候にやられた。生育も、さや付きもよくない。獣害などもあり、まともにできているのは3割程度」と言い、「注文は毎年増えているのに、物がないかもしれない。まいった」とため息をつく。

黒枝豆のさや数と最高気温の推移

「猛暑でいろんな作物に影響が出ているのに、黒豆だけ大丈夫なんてことはないと思っていた」と話すのは市中部の農家。保水力の高いほ場のためか、前述の農家ほどの状況ではないものの、出来はそれほど良くない。「遅れているというよりも、一番花が落ちてしまい、後からの二番花がさやになってきた印象」と言う。

知人の農家が例年の6月ではなく、たまたま7月に植えた苗が順調に育っているそうで、「もしかすると一番暑い時期を避けられたのかもしれない。植え付けを後ろにずらすことも手かも」と話す。

これまでは上限なしに注文を受けていたが、今年は上限を設けた。「後ろにずれているだけで、『11月ごろまでいけるかも』と淡い期待はしている。遅く始まり、早く終わるのが最悪」と苦笑する。

多くの農家の情報が集まる丹波篠山市場(郡家)も、「良くないという声は多い。畑によって違いがあるが、米も減収と聞いているので、黒豆も不作になるかも」とする。

誰もが恐れているのが、この天候が今後も続くこと。ある農家は、「ゾッとする」と言い、「植え付け時期をずらしてリスクを分散するなどし、気候に合った栽培方法を研究するしかない。畑によって違いはあるかもしれないが、『こういう方法でうまくいった』という情報が知りたい。『あかん』ばかり言っていても仕方ない。みんなで情報を持ち寄って良い方法を共有する機会がほしい」と話す。

市などは例年10月5日に発表していた黒枝豆の販売解禁を、今年は10月7日に遅らせた。

市は、「数字だけを見るともっと悪い年があったが、今年は大きくなった木と、さやの少なさのギャップに驚かれた人が多かったのではないか」と推測。「高温が続いており、これまでの栽培方法が合わなくなっている可能性もある。高温に対応した方法も検討していきたい」としている。

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