デイ利用者の夢叶え 「恩人に会いたい」「動物園に行きたい」 目的のために運動を

2024.03.28
地域注目

「夢ツアー」で、ささやま医療センターの元産婦人科医、池田義和医師との再会を果たした写真を持って振り返るデイ利用者の金子あい子さん(左)、運転介助員の北川さん(右)、ツアーを準備した小立副主任(中央)=兵庫県丹波篠山市高屋で

兵庫県丹波篠山市高屋にある「和寿園デイサービスセンター」は、デイサービス利用者の「夢」をかなえる「夢ツアー」を行っている。「動物園に行きたい」「世話になった医師にお礼を言いたい」など、利用者の夢を聞き取り、担当の介護職員が、その実現を手助けする。これまでに7人の夢が実現。今後も約80人いる利用者の夢をできるだけかなえていくという。

同センターは、デイサービスで運動することが目的になるのではなく、何かの目的のために運動を楽しんでもらうことが大切だと捉え、利用者が夢を持ち、それを励みに運動をする、というようになればとツアーを企画した。

1回目は2022年6月、男性利用者が「動物園で動物と触れ合いたい」と希望。職員が、男性の希望がかなう動物園を探し、京都府福知山市動物園でヤギやウサギなどと触れ合ったり、餌をやったりして楽しんだ。担当した職員は「(利用者は)大はしゃぎで、童心に帰られていた」と言い、手応えを感じたという。

その後、コロナ禍で中断。再開した昨年10月には、女性2人が「仲良し同士でコンサートに行きたい」と希望し、市内の城南小学校で行われた「丹波の森国際音楽祭」の「街角コンサート」を鑑賞した後、ファミリーレストランで昼食を楽しんだ。

「夢ツアー」で動物との触れ合いを楽しむデイ利用者=京都府福知山市で

同年11月、利用者の金子あい子さん(83)は、2019年3月に兵庫医科大学ささやま医療センター(同市黒岡)を退職した産婦人科医の池田義和さんに「会って、お礼を言いたい」との願いが実現した。金子さんが経営していた飲食店に池田さんが通っていたことや、孫2人の出産に携わってもらったことなどから、「池田先生が丹波篠山を離れられ、本当に寂しい。お人柄も良く、大変お世話になった。命の恩人」と言う。

担当の介護職員、小立香陽子副主任が現在の池田さんの勤務先、京丹後市立弥栄病院に連絡して経緯を説明、面会の約束を取り付けた。小立副主任と、同医療センター元事務員で、金子さんの運転介助員をしている北川佳子さんの3人で同病院を訪ね、金子さんは池田さんとの再会を喜び、礼を述べた。また、ひ孫の写真を見せるなどし、最後に手をしっかり握り合った。金子さんは「またお会いできると思わなかった。本当に良い企画をしていただいて感激」と感謝していた。

同年12月には女性の利用者が「正月飾りを作りたい」と、県立ささやまの森公園でミニ門松作りに挑戦し、今年1月には「ミュージカルを見たい」という女性利用者が「丹波篠山市民ミュージカル」を鑑賞。また、外食を希望し、スーパーでソフトクリームを食べたり、寿司店へ行ったりする利用者もいた。今月は、「夫と外出したい」という車いすの女性利用者の夢をかなえるため、職員が女性利用者と夫を車に乗せて、ドライブする企画も予定している。

小立副主任によると、男性は「釣りがしたい」や「会社の仲間に会いたい」など、女性は肉料理や寿司を食べたいなどの希望が多く、男女とも墓参りを希望する人も多いという。

瀧脇大史所長(46)は「ツアーを通して、利用者や家族との距離も近くなっているようだ。皆さんの夢がかなうよう続けていきたい」と話している。

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