当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は、丹波篠山市寺内にある「笠鷺(かささぎ)稲荷神社」です。
丹波篠山市城北地区の寺内集落にある大賣(おおひるめ)神社の境内にたたずむ「笠鷺稲荷神社」。その拝殿にある鈴の緒には、たくさんの麦わら帽子が垂れ下がる。その一見不思議な光景は、「おでき解除」の信仰を集めることに由来する。
名前にある「笠」が「かさぶた」に転じて「できもの」を封じると信じられ、平癒を祈願し、御利益があった際には笠を奉納する風習がある。かつては笠だったのが、現在では麦わら帽子で代用されており、垂れ下がる帽子は、御利益があった「証し」ともいえる。同神社によると、最近、麦わら帽子は増えていないものの、千羽鶴が掛けてあり、「病気平癒を願われているのだろう」とする。
「多紀郷土史考」には、「一時は大変な流行神様であった」とあり、「瘡疳(そうかん・正しくは疳瘡=梅毒による陰部のただれ)によくきくというので梅毒患者は元より、子供の出来物等に願掛けすれば直ぐ平癒するという」と記述がある。
ちなみに同書は、「ところで勧請したのは江戸の笠守稲荷であると思う」と推測し、「それが瘡(かさ)守りに思い違えられて瘡疳の神になったなどは面白い変化」としている。「江戸の笠守稲荷」は、大阪府高槻市にある「笠森稲荷神社」から勧請されたものと考えられ、こちらも「笠=瘡」から、梅毒平癒に御利益があるとされる。
江戸時代から続く〝神頼み〟。同神社は、「私たちも何か不安なときに神社で手を合わせると、心が静かになって落ち着く。心のよりどころとして祈ることで、平和に過ごしてもらえたら」としている。



























