のびやかな時代

2014.10.02
丹波春秋

 喜寿を記念し、先ごろ句集を自費出版された元中兵庫信用金庫職員の足立頼昌さんから面白い話を聞いた。俳句を始めたのは、当時勤めていた支店の支店長から「金融マンも文化活動に親しむべき」と勧められたのがきっかけ。地元青垣にある句会に入会した。51年前のこと。▼句会には現職の町長や保健所長、学校教諭もいたという。休日や夜の句会ではない。毎月1回、水曜日の午後1時から開かれていた。信用金庫の支店長が句会への参加を認めていたことも驚きだが、現職のリーダーらが参加していたことにはさらに驚く。今ならば到底考えられない。▼仕事を持つ現役にとって、文化活動に親しむのは余暇の活用だ。手元の辞典によれば、余暇とは「仕事の合間の暇な時間」。文化活動は、アフターファイブや休日など、仕事から離れた暇な時間に楽しむのが当然であり、現役世代にとって仕事と文化活動は時間サイクルの上で明確に区分される。▼にもかかわらず、足立さんが所属していた句会では当時、本来仕事をするべき時間帯の平日の昼間に文化活動に親しんでいた。また、それが許容されていた。仕事を優先した後の文化活動ではなく、仕事も文化活動も同じレベルにあるとされたのか。▼いずれにしろ、心にゆとりのある、のびやかな時代だったのだなと感心する。(Y)

 

関連記事