写真

2016.12.28
丹波春秋

 NHK「視点・論点」で写真家の大石芳野さんが亡くなった永六輔氏を悼み、反戦の遺志を継ぎたいと話していた。永さんは気骨をふっくらと包み込んだ不思議な人だった。▼メインの仕事はテレビよりラジオ。写真を撮られるのは恥ずかしい方で、ほとんど大石さんにだけ許していたという。人の写真が多い大石さんも自身「人見知り」だそうだが、外国人でもどうしてあんな表情が引き出せるのか、不思議だ。▼永さんが亡くなる直前に出た「レンズとマイク」という大石さんとの対談集(藤原書店)に、「写真もラジオも乗り遅れてジタバタ」という章がある。「めまぐるしく技術が進歩し、テンポが速まってストレスがたまる」世界で、両人ともそれに抗っているようだ。▼篠山に来た大石さんがライカのフィルムカメラで「ジリリ、シャパッ」と鳴らす音が心地良かった。「ムービーに何度も誘われながら一度もやらない」という彼女は、「写真は撮る人と見る人がじっと向かい合う緊張感の中に存在する。そういうジャンルの大事さをずっと感じてきた」と言う。▼「福島 土と生きる」でも「戦争は終わっても終わらない」でも、ベトナム、チェルノブイリ、コソボで撮った「それでも笑みを」でも、見る自分がその緊張に臨み得る想像力を持っているかと自問する。(E)

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