篠山東雲高校の近くにある住吉神社に「住之江の庭」という名園がある。著名な作庭家、重森三玲氏が手がけた。完成から50余年。荒れた庭と化していたが、地域の力で再生することになったという。
同神社の祭神は海神。このため重森氏は海浜や波打つ美景を庭のテーマに置いた。一木一草用いていない枯れ山水庭園。海景の単なる写実ではなく、鮮やかに抽象化されている。永遠のモダンをめざして作庭したという。
丹波地域には重森氏の手がけた庭がいくつかある。市島町、石像寺の「四神相応の庭」もその一つで、龍や虎、鳳凰、亀を表現した石組みが配されている。4年前の丹波市豪雨災害で土砂におおわれ、無残な姿になったが、先ごろ地域の力で元通りに修復された。
作家の立原正秋は、著書『日本の庭』で重森氏の庭についてふれ、「どれも生臭い庭である。不安定で落ちつきがない。それでいて個性が強い」と評し、「氏の才能は安住していない」としながらも「百年後、二百年後という時間を考えたら事態は変わってくる。そのとき氏のつくった庭はどのように変容しているだろう」と、将来を楽しみにしていた。
四神相応の庭がよみがえり、住之江の庭もよみがえって未来に託されようとしている。「百年後、二百年後」の子孫への贈り物だ。(Y)