我思われる

2018.02.26
丹波春秋

 但馬生まれの教育者、東井義雄氏は師範学校生のとき、仏教の「独来独去」という言葉に出合い、衝撃を受けたという。

人は、一人きりでこの世にやって来て、一人きりで去っていく。「たくさんの人間がひしめき合っているが、いざとなったら、みんな一人ぽっちなのだということに改めて気づかされたのです」。

 周りに多くの人がいても所詮、一人きりの孤立した存在。この世に生を受けた宿命として人はこの孤独感から逃れることはできない。しかし、だからこそ人は、人とつながることに温かみを感じ、つながってくれる人の存在をありがたく思うのだろう。

 デカルトという哲学者は「我思う、ゆえに我あり」と言ったが、この言葉を言い換えた「我思われる、ゆえに我あり」も真実だ。自分のことを思い、つながってくれる人がいるからこそ、自分はここにいるという感触を得ることができる。

 丹南中学校3年生の家谷日和さんは、小学校5年生の頃から同じ集落に住む一人暮らしのお年寄りに手づくりの絵手紙を届ける活動をしている。人と人とをつなぐ絵手紙配達。心温まる話題だ。

 お年寄りは絵手紙を通して「我思われる」を実感し、家谷さんも絵手紙を楽しみにして喜んでくれるお年寄りの表情を通して「我思われる」と感じているのでは。(Y)

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