カンヌ映画祭で大賞を取った「万引き家族」(是枝裕和監督)を、まだ上映している福知山の映画館で観た。文句なく傑作だ。「家族」と名付けた意味がよくわかった。小さな家にひしめき合う老婆から幼児までの6人はそれぞれ血のつながりはないのに、他にも出て来る家族よりよほど温もりを持っている。
と言って、美しい家族愛が描かれているわけではなく、なりゆきでそうなっているだけ。生きていくための打算や欲得も微妙にからみついていて、観る者を面白哀しい気持ちにさせる。
6人が珍しく海水浴に出かける場面は、作中で唯一幸福感があふれ、どこから見ても普通の家族だ。こちら側から老婆の眼に映った、波打ち際で5人が遊ぶ後ろ姿は、はっとするほど印象的。しかしこの後、ドラマは急転回し、彼らはバラバラになっていく。
老婆、懐が深くそれでいてなかなかにしたたかな人物を演じる樹木希林は、凄いとしか言いようがない。一家の主婦的な存在の安藤サクラも、複雑な役回りを見事にこなしている。それに加えて、2人の男女の子役。根は素直だが翳りを持ち、境遇故にか世慣れしている。そんな感じを出す子をよく探してきたものだ。
物があり余る“豊かな社会”の底辺に、こういう家族もあるのかと目を見開かせる作品でもあった。(E)