遺伝学者の柳澤桂子さんが著書「永遠のなかに生きる」で、犬のノイローゼから見た『現代父親論』を展開している。

2006.12.27
丹波春秋

遺伝学者の柳澤桂子さんが著書「永遠のなかに生きる」で、犬のノイローゼから見た『現代父親論』を展開している。犬は、上のものに服従する動物。なのに、最近の飼い主は犬を甘やかす。犬にとってその家のナンバー2か1に相当する奥さんが特に溺愛し、奴隷のように仕えてくれる。犬は混乱し、はてはノイローゼになるという。▼長く、男性を中心とする集団をつくってきた人間も、犬と同様、本能的に序列意識を持っているのではと推察。ところが、かつて家庭内で最高位にあった父親が今、その位置からずり落ちた。「すると、子どもは心理的に迷ってしまいます」と、柳澤さんは説く。▼「地震、雷、火事、親父」と言ったのは昔のこと。地震などの災害が恐ろしいのは今も変わらないが、親父は哀れにも「おやじ狩り」におびえる存在になりさがった。柳澤さんの論を発展させると、おやじ狩りは、権威をなくした親父の不甲斐なさに対する少年達のいらだちの暴発かもしれない。▼家長を頂点とした家族は戦後民主主義の中で否定され、友達家族になり、親も子も横並びになった。これに対して柳澤さんは「父親が、家族の中でのナンバー1意識を取り戻さないと、健全な家族集団は成り立たないのでは」と問題提起する。▼父親はどうあるべきなのか。きょうは「父の日」。(Y)

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