「我れ自ら感じて」

2018.12.09
丹波春秋未―コラム

 「丹波自然友の会」が発足50周年を迎え、きょう9日、記念式が開かれる。同友の会は、各地を巡って自然に親しむだけでなく、研究にも打ち込み、その成果を書籍類にまとめて発表をしている。自然研究の分野でまさに先駆的な役割を果たしてきた。

 発足時の会員は16人。丹波の自然研究をリードした人たちばかりで、氷上郡内の学校教諭が中心だった。当時の学校教諭は、研究にいそしむだけの余裕があったのだろう。

 半世紀前の小学校時代を思い出す。クモにくわしい先生がいた。理科室には、先生が集めたクモの標本がずらりと並んでいた。数々の標本は、何かを調べ、学ぶことの楽しさを伝えているような気がした。無言の教育だったと思う。

 幕末に活躍した人物を多く育てた儒学者の佐藤一斎に、「我れ自ら感じて、而る後に人之れに感ず」という言葉がある。自分が感動してはじめて他人を感動させることができる。何よりもまず教える側の先生が感動していなければならない、という意味。

 生徒に学ぶ楽しさを伝えるには、先生が学ぶ楽しさを知っていることが必須。そのためには先生みずからが生き生きと学ぶ姿勢を示すことだろう。今の学校の先生は何かと忙しい。友の会が発足した頃の教育環境の方が恵まれていたのかもしれない。(Y)

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