村営発電所

2007.01.26
丹波春秋

 「本村においては村営電力を利用し、農村福利事業を起こさんと種々研究の結果、近時農村において最も多くゴム靴を使用されることを認め、これが事業に着手しましたところ、案外従来品に比して優美にて非常に丈夫な品ができました」▼「強い安いゴム靴が出来ます」と見出しを打ったこの文面は、上久下村(現丹波市山南町)有志によるゴム靴製造会社の広告。丹陽新聞(小紙の前身)大正15年11月21日号の下半分を占める異例の大広告だ。▼同村では、隣の久下村まで電線が引かれてきたにもかかわらず、電灯会社にいくら頼んでも「人口が少なく費用がかさむ」と断られ、「ならば自分らで発電所を」と、山林を売って建設費を工面。川代の渓流を利用したプラントを作り上げた。レンガ造りの建物は今に往事の面影を残す。▼冒頭の広告はその数年後、「わしらが電力」を使ってさらに事業を広げようという企て。「男女職工は株主より集め家族的組織をもって技術洗練、原料精選、実質本位を旨と致しまして至極低廉、特約店より注文殺到の状態であります」。躍動する文面から、村人の心意気がひしひしと伝わってくる。▼それから八十年を経て、この発電所建物の真下の川べりから「恐竜化石発掘」のビッグニュース。恐竜を梃に、貴重な産業歴史遺産たる同施設の活用に期待がかかる。 (E)

関連記事