開けられなかった棺

2019.05.23
記者ノート

 古墳に詳しい丹波篠山市文化財保護審議会委員の池田正男さんが、同市内の古墳を案内して下さった。

 東本荘にある雲部車塚古墳は、ユネスコ世界遺産登録の見通しで話題の大山古墳(堺市)と同じ前方後円墳。明治29年(1896)5月19日、篠山出身の考古学者の「皇族の墓かもしれない」という一言をきっかけに、村人による発掘が行われた。当時、古墳の濠は埋められ、牛や馬を放牧する農地として使われていたため、村長らが「皇族の墓ならば不敬にあたる。本当かどうか確かめよう」と考えたのだという。

 立派な石室と副葬品類が見つかり、大喜びした村人たちは、代わる代わる石室に入ったが、“核”の石棺は開けなかった。池田さんは、このことが後に宮内庁管理の陵墓参考地に指定される大きな理由になったとみる。村長が宮内庁と話し合った際、「皇族を敬う気持ちが国に通じたのだろう」という。

 古墳は誰かが眠るお墓であるが、古代史解明のカギを握るものでもある。代替わりで皇室のニュースに触れることが多い今、いろいろな考えが頭をめぐった。(古西 純)

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