西シベリアに住む少数民族の間に、夫婦のあり方について考えさせられる伝説がある。

2007.02.03
丹波春秋

西シベリアに住む少数民族の間に、夫婦のあり方について考えさせられる伝説がある。それによると、北の方角に1本脚の住人がいる土地がある。自分1人では歩けないので、男と女が肩を寄せ合って2本脚で歩いている。▼2人がしっかり愛し合えば、2人は風よりも速く走れるが、愛し合うことをやめると、もとの1本脚に戻り、2人とも歩けなくなる。夫婦とはそれぞれ1本脚の存在であり、2人そろって初めて2本脚になることを教えている。▼よく夫婦をたとえて「二人三脚」というが、二人三脚は2人の息が合わないと、スピードが落ち、転倒したりする。1人で走る方がよほど自由で、速く走れる。夫婦を二人三脚と考えているかぎり、紐をほどきたくなる衝動にときに駆られるものだ。▼妻の介護を理由に高槻市長を辞めた江村利雄さんの講演が丹波の森公苑であった。認知症になった妻のおしめを換え、食事の世話をしている話を聞き、夫婦愛について学ぶことが多かった。▼介護を始めるまで洗濯も料理もしたことがなく、苦労したという江村さんは「妻が亡くなると、夫が早死にするのは当然だ」と話していた。認知症の男性は、妻の名前を忘れないという話を聞いたことがある。忘れると、生きられなくなるからだ。男は、かよわき者。やはり2本脚ではない。(Y)

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