2020年のNHK大河ドラマが戦国武将・明智光秀を主人公にした「麒麟がくる」に決定したことを受けて、昨年、兵庫県丹波篠山市内で光秀にゆかりのある地域の住民が集まって組織していた「市NHK大河ドラマ推進準備委員会」がこのほど、光秀と激闘を繰り広げた武将・波多野秀治の本拠で、国史跡・八上城のおひざ元、八上地区の高城会館で会議を開き、本委員会に移行した。市は知名度で光秀に劣る秀治ゆかりの地であることをアピールするため、波多野氏との戦の中で光秀の母親がはりつけにされたという伝承をPRする方針を提案。PRポスターのサンプルが公開されたり、ロケ地誘致策が発表されるなど、大河を生かしたまちづくりの具現化に向け、本格的なスタートを切った。
96年大河では野際陽子さんが“はりつけ”
「麒麟がくる」は主人公の光秀を長谷川博己さん、母の牧を石川さゆりさん、織田信長を染谷将太さん、濃姫を沢尻エリカさんが演じることなどが発表されている。現時点で秀治や八上城などが登場するかどうかは明らかになっていない。
委員会は光秀や波多野氏が築いた城や砦、光秀に攻め落とされた城などがあったと伝わる地域の住民など19人で構成し、市が事務局を務める。
会議では、山本高久・市観光政策官が、元NHK京都放送局長で、現・京都府参与、「麒麟がくる」の推進アドバイザーを務める山本壮太さんから受けたアドバイスを紹介。秀治は光秀に比べて知名度で劣るため、伝承として残る「光秀の母(明智牧)がはりつけにされた場所」としてPRするほうが全国的にわかりやすく、インパクトがあり、続いて、光秀を苦しめた名武将・秀治をPRしてはどうかと助言を受けたことを説明した。
山本政策官は、「演歌歌手の石川さゆりさんが牧役を演じる。1996年の大河『秀吉』では、野際陽子さんが演じ、八上城でのはりつけが登場した。その放送回は、かなりの視聴率となったため、石川さんを起用していることを考えても、NHKの見せ場になるはず」と期待を寄せた。石川さんのコンサートを市内に誘致することなども検討していくことを明らかにした。
また、光秀と秀治、そして牧を配したポスターサンプルも公開。牧の処刑は、光秀が信長に対して謀反を起こした原因という説を採用し、「本能寺の変の謎は 丹波篠山にあり」というキャッチコピーを打った。
そのほか、市がウェブサイトやパンフレット、PRグッズ、のぼりの作成やPR動画、市民が武将に扮したポスター、ロケ地誘致のパンフレットなどの作成を予定していることを説明。また、八上城(高城山)の主郭部9000平方メートルで約800本の木を伐採し、眺望を良くすることや、駐車場、案内板の整備、ゆかりの地域が取り組む活動に対する支援策などを紹介した。
母のはりつけ、本能寺の変の要因に?
天正3年(1575)、織田信長の命を受けた光秀は「丹波攻め」を開始。秀治は当初、明智軍に加わり、隣の氷上郡・黒井城攻めに参戦したが、天正4年(1576)、秀治は突如、黒井城の赤井直正方に寝返り、明智軍を背後から攻撃。明智軍は、大打撃を受けて敗走した。以後、秀治は反織田勢力の一角となった。
翌年、光秀が丹波攻めを再開。多紀郡(現・丹波篠山市内)の城が次々と攻め落とされ、天正6年(1578)には、秀治の本拠・八上城攻めが本格化し、約1年半にわたって耐え抜いたものの、ついに秀治は光秀に降伏。その後、信長の本拠、安土に送られて処刑された。
秀治は命を保障されて安土に送られたものの、信長が約束を反故にして処刑。激怒した家臣らが、光秀が決着をつけるために波多野側に人質として差し出していた牧をはりつけにしたという伝承が残っている。
最新の研究では、牧のはりつけは後世の創作とされているが、酒井隆明市長は、「史実か伝説かはNHKが判断されるもの。いずれにしてもそういった伝説の残るロマンのある地として、丹波篠山市をPRしていきたい」とした。
丹後政俊委員長は、「大河をきっかけに、これからも地域を盛り上げていく取り組みにしていきたい」と話していた。