アイルランドでの光景

2007.02.15
丹波春秋

 だいぶ前のことだが、アイルランドの首都ダブリンの繁華街で目撃した話。幅二十?ほどの道路を、信号が青になり横断していると、向こう側から白い杖をついた男の人がやってきた。▼筆者は何気なく通り過ぎようとしたが、その時少し離れた所にいた中年の婦人がすっと近づいてその人の手を取り、自分は引き返さなければならないのに、横断し終えるまでエスコートし続けた。信号が変わり、婦人は次の青まで平然と待っている。道路のこちら側で思わずうなってしまった。▼途中で引き返してまで、なんて、日本では銀座や梅田はおろか、小さな町でもまず見かけない光景だろう。見習おうとしても、にわかにはなかなかできない。照れが先立ち、タイミングを失ってしまいがちだ。▼電車の駅で時々、駅員が車椅子の人の乗降を助けている。結構なことだが、乗客にも側面からの助けを求めるようにすれば、もっとそういう場面に慣れてくるかもしれない。小さなことからでもまず実行だ。特に子供の頃から。▼本紙の新年文芸には「人間のマナー」(崇広小、高橋凌君=1月21日号)、「安心できる町をめざして…」(吉見小、吉武穂積さん=1月28日号)、「『五体不満足』を読んで」(黒井小、奥野結衣さん=2月4日号)などなど、すばらしい作文が載っている。大人も読んでほしい。(E)  

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