「名」の持つ力

2007.02.01
未―コラム記者ノート

 アカデミー賞を受賞した「千と千尋の神隠し」で、物語の柱の一つになっていたのは「名前」だった。劇中に登場する魔女は、名前を奪うことで相手を支配する。支配からの解放は、その逆の手順。主人公の少女がたった一言名前を呼ぶだけで、魔女の家来だった少年は、恐ろしい支配から解き放たれるのである。 このような「名前」に対する一種の畏怖は、洋の東西を問わないようだ。イギリスの人気童話「ハリー・ポッター」シリーズでも、「史上最も残酷」と言われる魔法使いの恐ろしさを知る者は、彼の名前を決して口に出さない。このことは、その魔法使いに対する登場人物の「恐れ」として描かれ、同時に、その名を呼ぶハリー・ポッターの勇気も象徴的に示している。 「名前」を特別視する思想は、フィクションでことさらに強調されているわけではなく、現実世界でも古くからあった。画数による吉兆の判断が、現代でも根強い影響力を持っていることからも、それは分かる。 つきつめると、対象物を区別するための記号でしかない「名前」だが、あまりにも絶大な効力を持つ記号であるため、ときに呪術的な要素をも含んだ、さまざまな役割を担わされている。 数個の文字の組み合わせながら、その意味合いは果てしない。新市に与えられる「名前」は、31日に協議される。(古西広祐)

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