アキラ

2007.02.01
未―コラム記者ノート

 篠山チルドレンズミュージアムを舞台にしたあるエピソードを、副館長の目黒実さんが23日のフォーラムで紹介した。 主人公は市内の小学生「アキラ」。彼は年間100日以上、同館にやって来るが、一度もワークショップには参加したことがない。自分で、または友だちと面白そうな遊びを見つけては“おれ流”のワークショップを楽しんでいる。ある休館日。同館の前を通りかかったスタッフがふと見かけたのは、アキラが黙々と同館を掃除する姿だった。 目黒さんは、「篠山のアキラ伝説」として機会があるごとに各地で紹介しているという。「子育ては待つことだ」「この館に無償でかかわっている地域の人たちの思いも子どもたちに伝えていくべき」といった話に、このエピソードを付け加えた。 今の大人たちが子どもだったころ、みんながアキラだったに違いない。ゲームや大人に遊んでもらうのではなく、子どもたち自身で遊びを生み出していたことだろう。 フォーラムでは遊びと隣合わせにある“危険”について、河合隼雄さんが「子どもの自主性を育てるポイント」と述べた。どこまで見守れるか、どこまで自由にさせてやれるか。“元アキラ”である地域の大人たちの裁量が問われている。自身も子を持つ親となり、「頭では分かっているけれど」と自問が続いている。(芦田安生)

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