歌声よつながれ

2007.02.01
未―コラム記者ノート

 会場が歌声の渦に飲み込まれたようだった。丹波の森公苑で開かれた、6年ぶりの「第九」演奏会のことである。約200人の合唱団が響かせる「歓喜の歌」の力強さは、その場で聴いていた私たちに、なんとも言い表せない感動を与えてくれた。 半年かけて積み重ねてきた練習の成果を、1時間にも満たない一回の演奏で発揮する。どれほどの緊張感だろうか。演奏を終えた合唱団員が一様に見せていたさわやかな笑顔から、逆にその重さが感じられた。 もちろんそれ以上に、大きな仕事を成し遂げたという、心地良い達成感が伝わってきたことは間違いない。会場と一つになって合唱された、アンコールの「きよしこの夜」の歌声の大きさがその証拠だろう。舞台と観客が一つになることは、双方が思いを共有していないと難しい。多くの観客が、晴ればれとした表情の合唱団に自らの姿を重ね合わせながら、歌声を響かせていたのではないだろうか。 合唱団には同僚も何人か参加していたが、いずれも、音楽活動に親しんでいたとは言い難い面々である。「やってみたいとは思っていたけど、機会がなかったので」と、同僚の1人。6年ぶりの大イベントは、こうした未経験者に新しい挑戦への絶好の機会となった。着実にすそ野を広げた「歓喜の歌」が、いつかまた響く日を楽しみに待ちたい。(古西広佑)

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