冬の灯り

2007.02.01
未―コラム記者ノート

 先日、丹波特産の黒大豆を生産している農家のお宅にお邪魔した。お正月を前に黒大豆の出荷作業は最盛期。機械化が進んでも、出荷前の最後の選別は手作業が多い。その様子を写真におさめるのが目的だった。 その農家では、こたつを改良した選別台を使っていた。豆がこぼれ落ちないように木枠で囲み、勉強机にあるような電気スタンドで黒豆を照らす。出荷できるもの、しわのあるもの、割れているもの、食べられそうにないものを選り分けていく。 「しわがあっても炊いたら、つやつやした煮豆ができるよ」「割れたのは黒豆味噌に加工します」。食べられそうにないものも肥料に混ぜて使うという。丹精込めて作った黒豆を決して無駄にはしない。 夫婦で向かい合いながら作業が続く。「普段は話すことも少ないけれど、手よりの作業が始まるとコミュニケーションをとりながらやってますわ」と少し照れながら話す表情がほほえましかった。作業している農家を照らす電気スタンドの灯りが、暖炉の火のように温かく感じる。 得した気分になって帰路につくと、クリスマスが待ちきれない民家からイルミネーションの灯りが優しい光を放っている。師走の忙しさにばたばたとしている間にもクリスマスやお正月は近づいて来る。人々の暮らしが感じられる冬の灯りは温かく、ほっとさせられる。(芦田安生)

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