砲丸投げと手紙

2007.02.01
未―コラム記者ノート

 うれしいニュースを二つ取材した。一つは、篠山東中学校陸上部の山田傳二君が砲丸投げで全国制覇を成し遂げたこと。181センチ、115キロという恵まれた体格に、努力で自分のものにした「回転投法」が加わり、一番高い表彰台へと押し上げた。 「ある先生から『山田が教室で回っている』と言われまして」と顧問の東浦教諭。最初は遊びでやっていたというが、回転投法を本格的に始めてからは自宅で専門書を見るなどしてこつこつと練習を積んでいたという。 「人と違う投げ方を一から始めるのだから、人の倍以上は練習しないとだめだと思った」という言葉が印象に残る。全国制覇は、そんな人知れぬ努力から生まれたのだ。 もう一つは特別養護老人ホーム「和寿園」に入所するお年寄りが、風船につけて飛ばしたメッセージに4通の返事が届いた。その中に生後4カ月の娘を突然死で亡くした大阪府豊能郡の母親から「(風船が)娘からの天国からの贈り物かなと思った」と心温まる手紙があった。 どこからともなく飛んできた一つの風船を見て、悲しみを乗り越えようという光がさしこんだのなら、どんな気のきいた励ましの言葉よりも、温かい何かが心に響いたに違いない。 この二つは違ったうれしさだけれど、どちらも“よくとびました”。(芦田安生)

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