丹波地域の教職経験15年の中堅教員を対象にした研修会で、篠山市出身のテノール歌手、畑儀文さんの講演とミニコンサートを聞かせてもらった。 全部で600曲ほどあるというシューベルトの全歌曲を、足かけ7年かけて歌いきった話や、自身が総合プロデューサーを務める「シューベルティアーデたんば」、離島の子どもたちと開いたコンサートなど、さまざまな経験について話されていた。これらのエピソードはある程度知ってはいたが、ご本人の口から直接聞くことができ、大変興味深かった。 中でも印象に残ったのが、子どもたちに直接響きが伝わるコンサートがしたい、と始めた「キンコンカンコンサート」の話。大きな体育館や講堂でなく、教室など子どもの目の前で演奏するというもの。「寝る子や騒ぐ子なんていない。みんな“あ然”として聞いている」という。 自分も小学生のころ、目の前とはいかなかったがプロの音楽家の演奏を間近に聞いて感動し、その楽器を始めたことを思い出す。決して熱心だったわけじゃなく、もう止めてしまったが、それでもいまだにその楽器の音色は大好きな音の一つだ。 今年もシューベルティアーデが始まった。子どものように“あ然”と聞き入るほどの純粋さはないが、CDでは味わえない生の感動を、時間を見つけて体験しに行きたい。(坂本守啓)