西尾武陵展

2007.10.25
未―コラム記者ノート

 篠山市立歴史美術館で、開館25周年記念事業として開かれている「西尾武陵展」。現篠山市大山上に生まれ、江戸時代後期に活躍した俳人だが、展示資料を見ていると、「どんな人だったのだろう」と興味がつきない。 俳人といえば、諸国行脚の旅に出るか、もしくは庵にこもっている、そんなイメージが浮かぶが、武陵はそのように俳句に専念してはおれなかった。家業は醸造業で、庄屋としての公務や篠山藩の御用達、問屋の仕事などもあり、多忙だったらしい。 しかし、武陵は逆に、その立場を各地の文人たちとの人脈づくりに活かしたようだ。当時の街道筋にあった大山の武陵亭には、多くの俳人が訪ねたという。「千代のかたみ」という折本3帖は、著名な文人の書画270葉を貼り付けたもので、交流の深さを物語る。 今回の資料は全て、現当主西尾禎子さんが貸し出した。「蔵の中にしまってあるので、このように展示されると見違えます」と言われていたが、武陵の人柄やぬくもりを感じることができたのは、今も現地で子孫によって大切に保管されている資料だからかもしれない。(徳舛 純)

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