「お金がない」の怖さ

2008.01.24
未―コラム記者ノート

 「お金がない」。意見を受ける側には最大の言い訳に、意見する側には最もやる気を失わせる言葉だと思う。取材中、そこかしこで耳にする。「お金がないから無理です」「お金がないやろうから、言っても無駄」。聞いているだけで、落ち込んでくる。 篠山市と京都府にまたがる「板坂トンネル」の取材中もよく聞いた。電球照明が少なく暗いトンネルで、競輪選手が事故で命を落とした。暗さと事故に因果関係があるのかどうかは、判断が分かれる。しかし、この件にかかわる多くの取材先でも、お金が付きまとう。「予算がない」「維持費が厳しい」など。 トンネル近くの住民らは、以前から暗いと思っていたが、その声は届かなかった。ある住民は「明るくならへんし、あきらめていた」と話す。ここが、怖い。 意見する側があきらめるということは、何か悪いことがあっても、見過ごすということになる。「お金がない」という雰囲気が、さらに地域の悪化を招いている気がする。「住民がもっと意見を!」などと、偉そうなことは言えない。でも、思っていること、伝えたいことを察知し、代弁できるような記者になりたい。(森田靖久)

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