以前「空き缶を集めて売却した収益金で大書院復元に100万円以上寄付したおばあさんがいる」と聞いて驚いたことがあった。篠山市魚屋町の志原鈴子さん(85)。今も毎日空き缶を集めていると聞き、取材に伺った。 朝7時。散歩が始まる。通りを少し歩き、角を曲がると「お日様」に手を合わせた。 空き缶は、袋に入れて近くの人たちが軒先や辻に置いている。それを集めながらすたすた歩く。 しばらく行くと、お不動さんがあり、さい銭を入れて手を合わせる。そばのモクセイから落ちた葉っぱを拾って掃除する。お稲荷さんではお供えの花と水を取り替えた。 お参りの目的地、王地山の弘法大師堂に着いた。ひざまづき、般若心経を唱え始める。終わると、周囲の草を鎌で刈ってきれいにした。 階段を降りると、8時を知らせる音楽が響いた。「私に付き合っとったら長いで、もう帰り」と志原さん。帰りは先祖の墓や地蔵を回り、別のルートで帰るらしい。 缶を大きな袋に詰め替え、サンタクロースのように背負って歩き出した後ろ姿を見送って別れた。 (徳舛 純)