北海道のある町立病院で勤務医をしている知人が、町長や議会に示す提言書を読んだ。この医師は外科医。診療所にはほかに2人内科医がいる。氏は、提言に「本来、この町に外科の専門医はいらない」と記している。隣町の病院に送って症例を集めた方が良いと。そして、自分が退職した後は、大学から後任が送られてくる可能性もほとんどないと分析し、外科専門医の招へいはこの際あきらめ、自分が教えるので、外科系疾患も幾分診れる総合診療医を養成しては、と発想転換を提案している。 全国的に著名な技術を持つ、スペシャリストである。そんな氏が、まるで自身の存在を否定するような提言をまとめたことに驚く。プライドを脇に置き、町の医療の将来にわたる継続と、医療資源の最適化を進めようと考えている。 氏は、医療、そして自身の存在を「公」のものと捉えている。県立柏原、柏原赤十字、兵庫医大篠山の3病院の院長会議が今月開かれる。個々の病院でなく「丹波圏域にとって今とりうる最善の策」「圏域内医療資源の最適化」を話し合う場になることを願う。(足立智和)