春への胎動

2009.02.20
未―コラム記者ノート

 趣味を兼ねて、ヤマアカガエルの卵塊調査の取材に出かけた。現場は篠山市藤岡地区の山際の田んぼ。トラクターのわだちが作った窪みの小さな水溜りにブヨブヨとしたゼリー状の卵塊が漂っていた。 同行していただいた日本爬虫両棲類学会会員の田井彰人さんは、水溜りに浮かぶ直径約20センチの卵塊をやさしく網ですくい上げ、「ずいぶん発生(成長の度合)が進んでいる。この具合からして、1月中旬ごろに産みつけられたものですね。今年は例年より1週間ぐらい早い」などと説明してくれた。 1月中旬というとまだまだ真冬である。田井さんによると、ヤマアカガエルはもともと北方系の生き物で、寒さに強く、卵を食べるイモリや、カエルを狙うヘビなどの天敵が少ない冬に産卵する。それは、子孫を少しでも多く残す戦略なのだという。 ヤマアカガエルに続いて、カスミサンショウウオやニホンヒキガエルも産卵に入る。 人知れず、毎年確実に始まる春への胎動。生きものたちの営みや自然の神秘に迫る情報を機会があれば読者の皆さんに発信できればと思っている。 (太治庄三)

関連記事