懐かしいにおい

2009.08.27
未―コラム記者ノート

 篠山市大山小学校区内の一印谷地区で、ため池の役割や仕組みを学び、地域の自然とその魅力を再発見してもらおうと、水が抜かれて浅くなったため池で魚取りのイベントが行われた。 子どもたちは最初こそ、ヌルッとした泥の感触に顔をひきつらせていたが、水面からわずかに背ビレをのぞかせ、悠々と泳ぐ魚の姿を見つけると、狩猟本能に火がついたのか、たも網を手に獲物めがけて突進。「われ先に」と大勢の子どもたちが泥しぶきをあげながら、池の中を元気いっぱいに走り回った。ひとりの少年が、自分の胴体と同じほどの巨大なコイを捕らえ、得意げに持ち上げた瞬間、泥臭さと淡水魚特有の生臭さが鼻をついた。そのにおいに懐かしさを覚えた。 私が子どものころ、同じように水が抜かれて沼地化したため池で、村の大人たちに交じって泥まみれになりながら、フナやコイを捕まえた。大きなバケツに山盛りのタニシや魚を抱えて家に帰ると、祖母が甘辛く煮付けてくれて、その日の食卓にのぼった。泥のにおいや子どもたちの歓声が、そんな遠い日の記憶を運んできてくれた。  (太治庄三)

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