早朝、頬をなでる冷たい空気にバチっと目が覚める。時計とにらめっこ。うう、そろそろ準備しなければ遅刻してしまう。でも、出たくない。窓からは、赤く染まった山が見える。今年もついに布団と闘う季節がやってきた。 大学などで都会に出ていた私が、丹波へ帰ってきて気付いたことがある。周囲が建物で覆われた都会では、目で冬という季節を感じることが難しい。あるとすれば、白い息と街を歩く人の服装くらいだ。 色づく山、おいしい季節野菜、野焼きのにおい、バリバリと音を立てる足もとの霜、肌に触れて解ける雪―。私たちが暮らす丹波は都会と違い、視界も含めた五感で冬を感じることができる。 五感は人や動物が外界を感知するためのもの。その機能を正常に発揮できるということは、人にとって住みやすい土地ということなんだろう。 「カメムシが多い年は特に寒いんや」。取材先のおじさんが言っていた。そんな言い伝えも多く残る土地。第六感まで機能を発揮できそうだ。 2日には木枯らし1号が吹いたそう。「どうりで寒いわけね」。布団を出ながら一人ごちた。 (森田靖久)