前号の本紙丹波市版で、「山の幸が凶作で、例年よりもイノシシが里に多く出没。おかげで豊猟の模様」と報じた。「わが町、今田町の現状は」と探ってみて驚いた―。 町内の猟師7人で4―10月の半年間、檻(おり)のワナによるイノシシの捕獲頭数は107頭にもなり、ひとつの檻の中に9頭入っていたこともあったという。もちろんこれらの数字は異常で、狩猟歴約30年の私の父親も「経験したことのない数」と興奮気味に話す。こんなにも獲ると「地域絶滅するのでは」とも感じたが、つい最近、自宅前の田んぼの畦に、真新しい足跡や土を掘り返した跡がたくさん見られた。「一体この辺りの森には、何頭潜んでいるのか」。野生の底力を感じた。 里への大量出没が本当に山の幸が影響しているのであれば「お気の毒に」と同情したくなるが、罠に掛からず、餓死することもなく、この試練を乗り切れたイノシシはいわばエリート。優れた遺伝子を引き継いで、今後ますます手ごわくなっていく野生動物に対し、自然への関心や実体験がどんどん失われていく現代人。近い将来、里山はどうなっていることやら。(太治庄三)