感応の輪

2008.02.12
丹波春秋

 車の運転中に、パンクしたタイヤの交換を手助けしている人を目撃した。男性が交換し、そばに女性が立っている。その場を通り過ぎ、400メートルほど行った所で、自動車の後輪がパンクして困っている女性を見かけた。そのとき、あなたは車を止めて女性を助けるだろうか。▼これは実際に行われた心理学の実験である。タイヤを交換していた男性も、困っている女性も実験の仕掛け人。その結果は、2000台の車のうち58台が止まった。比較するため、もうひとつの実験もした。それは、タイヤ交換を目撃せず、いきなりパンクの現場に遭遇するもの。この実験で車を止めたのは、2000台のうち35台だった。▼この結果から、他人が援助している様子は、それを見た人に援助行動を促す効果のあることがわかった。他人の行動に感応し、望ましい連鎖を呼び起こしたわけだ。▼過日に行われたフォーラムで、地域を流れる川でゴミの回収に取り組んでいる篠山市黒田地区の自治会長が、「回収している後ろ姿を見てもらう。姿を見れば、捨てる人もなくなる」と話していた。先の実験結果は、この見通しを裏打ちしている。▼車を止めたのが2000台の58台だったことからすると、一朝一夕に好転するとは思えない。しかし、根気強く継続すれば感応の輪が広がり改善に向かうことだろう。 (Y)

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