先日、親友のお母さんが亡くなった。90歳だった。
遊びに行くたび、「まぁ上がっていって」と優しい笑顔をくれた。ソファーに座って愛猫をひざの上に乗せ、うたた寝するのが大好きだった。
突然の訃報に自宅へ駆けつけると、驚くほどに穏やかな表情。顔色も良く、ふっくらとされて見える。優しい気持ちで逝かれたのであろう。
「あんたらに迷惑かけんと、ぽっくり逝きたい」というのが口癖だったそう。「ほんまに子孝行な人やで」と親友はほほ笑んでいた。
葬儀の日。最後の親孝行にと、棺は親友が手作り。霊柩車も普段乗り慣れた自家用車にした。こんな葬儀を見るのは生まれて初めてだ。
棺には、参列者全員でメッセージを書いた。その中に親友のものもあった。「大正・昭和・平成と生き抜いてきた母。最高の母親でした」
棺を乗せた車が出発する。息子と2人、最後のドライブを楽しまれただろうか。
子を思う親、親を思う子。当たり前の、でも、一番大切なことに気付かされた。
ありがとう。お母さん。安らかにお眠りください。(森田靖久)