崩れる世間体

2008.02.25
丹波春秋

 いわゆる結婚適齢期になっても、結婚しない若者が増えている。昔ならば考えられなかったことだ。一定の年齢になれば結婚するのが当然とされた。結婚をしないという選択肢は、世間が認めていなかった。▼世間の規準から外れずに生きる。世間並みに就職し、世間並みに結婚する。世間に対して恥ずかしくない行動をしようとする規範意識を、世間体といった。晩婚化の進行は、旧来の世間体が崩れつつあることを物語っている。▼それ自体は悪いことではない。世間体をとりつくろうのに汲々としていると、自分を見失ってしまう。世間体を規準にするよりも、「自分はこうありたい」と主張できる強さを持っていたい。しかし、世間体という枠が外れたことで、みっともない行動をするのはいただけない。▼若い女性が電車内で化粧をする。ここには世間体がない。周りから自分がどのように見られているか、世間に対して恥ずかしい行動をしていないか、という意識が欠落している。▼過日の講演会で、講師が「驚いた出来事」と前置きし、カップ麺を食べながら電車から降りてきた高校生たちに出会った体験を語っていた。世間体という規準を取り外したならば、物事の良し悪しを見極める指針を自分の中に持たなければいけない。しかし、その指針は養われていないようだ。(Y)

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