温暖化見抜いた内村鑑三

2008.04.03
丹波春秋

 30年前、関西新空港プロジェクトで大阪府庁などを取材に回っていた頃、「ジェット機の排気ガスは地球を温暖化する」との問題提起がなされ、同庁の環境担当者に聞くと、「地球はむしろ寒冷化に向かっている」と一蹴された。▼筆者の問題意識も強くなかったのでそれきり忘れていたが、先日、ネット百科辞典「ウィキペディア」で「温暖化の歴史的経緯」という解説を見て、その時のことを思い出した。▼「1980年代前半頃までは『地球寒冷化』が学界の定説だった」というのだ。して見ると、あの時の役所の感覚は、常識からずれてはいなかったことになる。今や取り返しのつかない寸前まで来たと言われるほどの問題が、世界的に認知されたのが、ついこの間だったとは、驚くべきことではある。▼ところが、先日ある人から教えて頂いた一文にまた驚いた。「今年の炎熱は何人も苦悶せし所、その原因のいずこに存するかは未だこれを知るに由なしと言えども、近年に至り世界の気候は年々炎熱を加えつつありとは、全く拠る所なきの言にあらず」。▼実に明治27年、内村鑑三が「国民新聞」に書いた一節。30年後の大正末期にも「国を興さんと欲せば樹を植えよ。農の本元は森林である」と書いている。誠に彼の慧眼に敬服すると共に、己の不明を恥じ入る次第。 (E)

関連記事