最後の「お当」

2014.03.29
未―コラム記者ノート

 「何百年と続いてきた『お当(おとう)』の行事が今回で最後になる。取材に来ないか」。こんな誘いを受け、篠山市今田町上小野原の弥勒堂に出掛けた。
 今もなお、各地にお当の行事は残っていると思うが、この集落のお当は、同集落の住吉神社の氏子が伝承。お当を取り仕切る「当元」と「当組」の2人が弥勒堂に氏子を招き、「この一年、みんなで神社を守っていきましょう」と酒宴を張る。堂内の弥勒菩薩像に供えていた供物「モッソ飯」を分け合って食べたり、酒を酌み交わしたりして過ごす、毎年春分の日に開いてきた女人禁制の年中行事だ。
 しかし、働き方や生活様式などが大きく変貌した昨今、年々参加者が減少し、継続が困難に。ついに幕を下ろすこととなった。
 連綿と続いてきた村行事の最後に記者として立ち会うことができた。行事のありさまを伝えるべく、写真と文字を限られたスペースの中に可能な限り詰め込み、前号の篠山版で報じた。取材時に80歳の当元が「時代は大きく変化した。その流れには逆らえない」とつぶやいた。その言葉が耳から離れない。(太治庄三)

関連記事