「丹波の祇園さん」とも呼ばれる篠山市宮ノ前の波々伯部神社境内で、毎年9月の第4土曜の夜に営まれている鎮魂講「万灯会」を取材した。参道の両脇に飾られた提灯の明かりに導かれ、境内へ。そこには無数の灯明がゆらめく幻想世界が広がっていた。
先祖を供養し、家内安全、心願成就などを祈る年中行事。境内に設営された大型テントの中には4段組みのひな壇が設けられ、イグサの灯心に火をともした小皿がずらりと並んでいた。その数ざっと1900個。それは今年の献灯者の数を表している。小皿一つひとつに献灯者の名前を書いた札が付けられており、訪れた人々は自分の名前を探し当てると、「あったー」とにっこり。その笑顔が淡いともしびにぼんやりと照らし出されていた。
同神社では、このほかにも1月に七日祇園と人形供養、半年ごとの大祓い、8月には例祭など、数々の行事が行われている。幾年にもわたって脈々と、季節ごとに繰り返されてきたこれらの行事いずれもが、里山の自然の調和と、人々の穏やかな暮らしが続くようにと願う祈りのかたちだ。(太治庄三)