神様はいずこへ

2016.12.12
未―コラム記者ノート

 あるお寺で取材していた際、住職からこんな不思議な話を聴いた―。
 同寺の近所に住む農家のおばあさんは、日照りが続き水不足になると、決まって賽銭とお米を握りしめ、山腹にある寺の本堂にお参りにやって来た。堂内の観音像に向かって「雨を降らして」と祈願。すると、7割ほどの確率で雨が降ったのだそう。願いが叶うとお礼参りにやって来て、お堂の扉の格子の上に米粒を置き、感謝の言葉を捧げていたという。
 続いては、“降霊”行事。大勢の村人が定期的に同寺のお堂に集まり、太鼓を打ち鳴らしながら、いわゆる「イタコの口寄せ」を行っていたというもの。日々の生活の困りごとなどを相談すると、神がのりうつった村人が解決のヒントなどを授けてくれるのだ。その神というのは、「伏見の稲荷」ということもあれば、同寺の茶の木の下に巣食うヘビということもあったそうだ。いずれも実話。
 高度成長を迎える以前の昭和30年代までの出来事という。わずか50数年ほどの間に、私たちの身近にいた神様は、いったいどこへ行ってしまったのだろう。(太治庄三)

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