司馬遼太郎と図書館

2008.11.03
丹波春秋

 作家、司馬遼太郎氏の作品をずらりと並べた企画展が、篠山市の中央図書館で9日まで開かれている。図書館こそが学校だったという司馬氏にふさわしい企画といえる。▼中学1年の1学期、英語の授業で司馬少年は先生に質問した。「ニューヨークという地名にはどんな意味がありますか」。この問いを授業妨害と受け取ったのか、先生は「地名に意味などあるか」と一喝した。司馬少年はその日の学校の帰り、図書館に寄ってニューヨークの由来を調べ、背景にある歴史を学び取った。▼「私の学校ぎらいと図書館好きはこのときから始まった」と司馬氏は述懐している。もし、司馬少年の問いに先生が地名の由来をていねいに教えていたら、違った方角に向かったかもしれず、少年期の分岐点となった。以来、司馬氏は、図書館を学校にし、膨大な本を読んだ。▼人気絵本「ぐりとぐら」の作者、中川李枝子さんの講演会が先ごろ丹波市内で開かれ、「生まれてどんな人に出会うか、どんな本に出会うかで人の運、不運は左右される」と話した。司馬少年の出来事はこの言葉に符合する。無理解な先生との出会い、図書館での本との出会い。出会いとは、まさに人生の妙だ。▼時あたかも読書週間(10月27日―11月9日)の真っ只中。本との出会いを求め、図書館に行こう。 (Y)

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