日本の田舎暮らし「幸せ」
丹波篠山市最東部にある、人口約30人15世帯の大藤集落で暮らすカナダ人大工。25年ほど前、北米発祥の伝統工法を指導するために来日。個人で仕事を請け負いながら、日本の田舎暮らしを満喫している。
幼い頃から、大工だった父の手伝いをよくしていたが、特に大工になりたいとは思わず、明確な夢もなかった。
マーケティングについて学んでいた大学時代、父の取引先だった九州の会社から、木製の枠組みに面材を打ち付け、壁と床、屋根を一体化させる「ツーバイフォー工法」を教えてほしいと依頼があった。父から技術を学んでいたケリーさんが“派遣”されることに。「仕事は何でもよかった。せっかくの人生。あちこちに行ってみたかった」と笑う。
来日してから3年後、以前、大藤で暮らしていた現場仲間のアメリカ人大工から同集落を紹介された。母国の静穏なまちで育ったこともあり、自然豊かな環境に引かれ、自宅を建てた。
山沿いの狭い砂利道を抜けると、洋画に出てくるような北米風の2階建ての家が現れる。周りには民家一つない。現在は大阪の現場へ向かうことが多いが、1日の作業が終われば大藤まで帰る。「2階のベランダで外を眺めながらビールを飲む時間が最高です」
5月には同じ集落内にある農家民宿のテラスを施工。「近所のおじいちゃんと一緒にコーヒーを飲みながらおしゃべりを楽しむ日もあります」といい、近隣住民とも積極的に関わっている。
「鳥のさえずり、川のせせらぎが聞こえる静かな環境。空気もおいしくて、幸せ」と笑みを浮かべる。趣味は「お寺巡りと温泉に行くこと」。47歳。