昨年2月に89歳で亡くなった丹波木綿作家、西垣和子さんの作品展が15日から22日まで柏原町柏原の西垣邸で開かれる。東京で5回、個展を開き、武者小路実篤や東大寺の清水公照元管長らとも親交があった西垣さん。兄で、画家の籌一(ちゅういち)さんは、知的障害者施設「みずのき寮」で絵を指導したことで知られた。▼にもかかわらず、西垣さんは地元ではあまり知られない作家だった。創作に没頭したのは、65歳までの20数年間で、丹波市では一度も作品展を開かなかったことも原因している。▼生前に西垣さん方を訪ねたとき、雑草のはびこった庭が目にとまった。草引きをさぼっているわけではない。聞けば、「昔は、山や河原に多くの雑草を見かけたんですが、今はなくなったような気がして」とのことだった。▼暮らしが豊かになるとともに、庶民の生活から消え、見捨てられた丹波木綿。それを今によみがえらせた西垣さんは、人に見向きもされない雑草にもまなざしを注いでいた。雑草の庭に、西垣さんの真骨頂をみる思いがした。▼「丹波木綿の仕事は、経済的には引き合いません。でも、これが私の生き方なんです」と語った西垣さん。骨のある女性だった。今回の作品展によって、西垣さんという作家の存在が地元で再認識されることを望みたい。 (Y)