戦国武将の明智光秀を主人公にした新作能「光秀」が8日、京都府・福知山城本丸の野外特設ステージで初めて上演された。能楽師の上田敦史さん(48)=兵庫県丹波市氷上町=が創作し、合戦シーンには丹波市民でつくる「丹波黒井甲冑隊」の5人が登場。映像監督は「ヱビスシネマ。」(同町)の近兼拓史さんが務めるなど、丹波市の関係者が活躍した。コロナ禍により無観客で上演されたが、福知山市は近く、30分ほどの映像を市公式ユーチューブチャンネルで公開する。
実業家の前澤友作さんが地域おこしのためにと、希望があった全国の自治体にふるさと納税を行った。500万円の寄付を受けた福知山市は、同城の活用アイデアを全国から募り、34点の応募の中から新作能の上演が採用された。
6メートル四方の能舞台に、笛や小鼓、大鼓、太鼓の囃子方に加え、地謡の計8人が鎮座。光秀や、光秀にゆかりがある武将の細川忠興、幽斎役の演者が登場した。上田さんは小鼓を務めた。
合戦シーンは物語のクライマックス。光秀と羽柴秀吉による「山崎の戦い」を表現した場面で、丹波黒井甲冑隊の吉住孝信さん(73)=丹波市春日町=、和田研一さん(73)=同=、塚本文則さん(67)=同=、竹村重雄さん(78)=同=、楠原健一さん(65)=同市青垣町=が出演。福知山市や亀岡市の甲冑隊メンバーを加えた計30人ほどの“武者”が登場し、能舞台前で切り合いを演じた。
合戦場面に出演したメンバーは、昨年10月から月3回集まり、能の所作を取り入れた動きで“チャンバラ”を稽古してきた。吉住さんは「素晴らしい体験ができ、一生の思い出になった。黒井城や赤井直正のPRにもなったのでは」と笑顔を見せた。
企画立案から脚本を含め、全体をプロデュースした上田さんは、これまで黒井城主・赤井(荻野)直正を主人公にした新作能などを手掛けてきた。光秀は直正と「丹波攻め」で戦ったことに加え、福知山城を築城するなど福知山市にもゆかりがあることから、今回の事業に応募した。
上田さんは「自治体や能楽師、地域住民など、チームワークよく活動できた。大きな形にでき、関わった方の力添えに感謝したい」と話していた。
あらすじ 1600(慶長5)年、細川忠興は福智山城を攻め、城を奪還した。城を訪れた忠興の父・幽斎は、かつての盟友で同城を築城した明智光秀を弔うべく物見やぐらに上がろうとすると、愁いを帯びた老人がいた。老人が出す不思議な雰囲気に誘われ、光秀を助けられなかったことへの悔恨を語ると、老人は涙を流しながら自身こそ光秀の霊だと名乗る。